2013年5月26日00時05分
多崎つくるの巡礼をたどって─記者・都築和人が迷い込む
村上春樹さんの3年ぶりの新作『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は、名古屋が重要な舞台になっていました。読み進めるうちに、小説の中の多崎つくるは、現実と非現実の融(と)け合った街に姿を現し、やがて歩き出します。あなたも、信号待ちの人影の中や公園の木陰でたたずむ彼と出会っているかもしれません。私と一緒に多崎つくるを追ってみませんか。
※これから小説を読む方は、読み終えてからこのページを開くことをおすすめします。小説を楽しみ、このページでもう一度、小説を読む楽しさを味わうことができるでしょう。
多崎つくる様
こんにちは。
あなたの名前は本を手にする前から知っていましたが、わかっていたのはあなたが「色彩を持たない」ことと、どこかを「巡礼」するということだけでした。いったいどんな人なのだろうと想像しながら発売日の4月12日を待っていたら、なんと、あなたは名古屋市郊外の公立高校出身で、名古屋の街から巡礼を始めたのですね。本当に驚きました。
私は名古屋市内ではありませんが、同じ愛知県内の公立高校を卒業し、あなたと同じように大学は東京に出ました。新聞記者になっていろいろ転勤しましたが、今は名古屋に勤務しています。あなたと出会う前夜は、閉店後の丸善名古屋栄店で、書店員があなたの登場する小説を段ボールから取り出して書棚に丁寧に並べていくのを取材していました。思えば3年前、あなたをつくった村上春樹さんの『1Q84 BOOK3』が刊行される日の前夜も、東京・青山ブックセンター六本木店で午前0時の販売開始を取材していたのでした。これも何かの縁ですね。
あなたが名古屋を歩いた同じ5月のある日、少しでもあなたの気持ちに近づきたくて私も名古屋の街を歩きました。
高校時代の仲間アオ(青海悦夫)の勤める「名古屋城に近い静かな一画」にあるレクサスのショールームは、きっとここだろうと高岳店を訪ねました。店内に流れている音楽は、あなたが聞いたカルロス・ジョビンではなく、クラシックのピアノ曲でしたが、色とりどりの新車が晴れがましく並んでいる様子はあなたの訪ねた時と変わりありませんでした。今にも私の前にアオが現れそうで、ドキドキしました。
To read the whole story go to: http://www.asahi.com/plusc/articles/NGY201305230077.html
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